どこの業界も人材不足まっただ中な今日。
特に飲食業界は、昔から人が足りない問題が耐えません。
大手チェーンなどであれば、最近は飲食店向けの人材派遣サービスも増えていますし、
費用は割高ですが、それなりに人材をそろえることは可能です。
ただ、個人店や小規模店舗となると話は別。
そもそも切り詰めてやっている中で、人材にだけそんなに費用をかけられないですし、
小さなお店ならではのお客様との距離もあるので、単発で外部のスタッフを入れるのもちょっと心配・・・
地方になるとさらに深刻で、僕の知っている例でも、
人がいなくて昼間しか営業できなくなってしまったラーメン屋さんがあったりもします。
ただ、逆にそんな状況をうまく工夫して乗り切っている小規模店舗さんもあります。
今回はそんなとある店舗さんの事例をご紹介します。
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深刻な人材不足
いくつか飲食店を経営されている知人のオーナーさん。
若手のやる気を引き出してどんどん店を任せ、小規模ながら都心で数店舗の居酒屋やバーを経営されています。
そのうちの1店舗に、新宿のハワイアンテイストのラウンジがありました。
店長さんを筆頭に常に3名程度のスタッフでシフトを組んでいましたが、
諸事情によりバイトさんが同じタイミングで退職、店長だけになってしまいました。
急ぎ募集をかけても、なかなかいい人材の応募が無い。
20席弱くらいの小規模店舗なので、お客さんとの距離が近く、会話などが発生することもあり、誰でもいいわけではない。
さて、いよいよどうしようとなったときに、こんなアイデアで切り抜けることができました。
人が足りないなら、何を提供できるか
上記のとおり、人は足りないが、
ではもしこのお店に来てくれる人がいれば、何を提供できるかを考えました。
店長一人では、料理とドリンクを納得のいく時間で納得のいくクオリティで提供するのは無理があります。
それなら、飲食店とはいえ、食事・飲み物の他に「このお店が提供できる価値は何か」ということを考えます。
どんどん挙げていくと、以下のような内容が出てきました。
・ハワイアンテイストを感じられる空間
・いい意味で小規模、アットホームで一体感のある空間
・大きすぎず、一人二人でも仕事がまわせるキッチン
・新宿の繁華街から徒歩数分の立地
・繁華街のビル内店舗なので、ある程度騒いでもOK
主に、空間・場所、という面での価値がちらほら。
これをもとに、次の展開を考えたのです。
「貸しスペース」という発想転換
そもそも現状では、食事・ドリンクで人を集めることができません。
ならば先に挙げたような「場所」の価値を最大限に使える形とは何か。
それは「持ち込みOKの貸しスペース」でした。
まわりは繁華街なので、食事や飲み会をしている人が多いです。
そんな人たちの2次会需要を狙って、”ハワイアンテイストが感じられる場所”を価値として提供する方向に切り替えたのです。
二次会では少しゆったりと話をしたいというニーズもありますし、
若者たちは、「この後、誰々の家行って飲もうぜ」的なノリもあったりします。
やはり1次会よりもゆっくりしたい、または親密に飲みたい、というニーズですね。
さらに、二軒目もまた居酒屋へ行くとなるとお金もかかります。
家飲みの需要があるのも理解できます。
そこで「持ち込みOK」「アットホーム」「貸切の専用スペース」という価値をうたって
貸しスペースとして再告知を行ったところ、やはり問い合わせが入り始めました。
人がいないなりのやり方
貸しスペースなので、基本的には食事・ドリンクは持ち込み形式で、自分たちで場所を使って楽しむ形式。
食事がメインの目的では無いので、提供が遅れたりしてサービスとして破綻することもありません。
必要があれば店長がドリンクや軽食を提供するなど、できる範囲での幹事さんのサポートをしてもいいでしょうし、
もし「食事も美味しいじゃん!」となれば、今後オードブルなど事前に準備できる形式で提供することもできるでしょう。
また、「やはり食事メインの店としてやりたいんだ!」ということであれば、地道に人を募集し、いい人材が入った段階で通常営業に戻してもいいでしょう。
それまでの間、自慢のメニューだけに絞って、貸しスペースのお客様に振る舞うこともできますし、
その後も予約ベースで、貸しスペースとしての用途は残すこともできます。
そんなこんなで、このお店さんは、今も引き続き貸しスペースとして順調に運営をされているようです。
人がいない!営業できない!
となると、焦ったり胃が痛くなってしまうこともありますが、
実は、あらためてお店の価値を見直して、新しい強みを見つけるチャンスなのかもしれません。