飲食店で正社員として働くメリット、デメリット

飲食業にとって大変な時期が続いていますが、
それでも飲食が好きだ、飲食業界でやっていきたいという人も多いと思います。

ただ、「今は業界的に先が見えないので心配」、「自分の店をやりたいが自信がない」、など心配なことも多いでしょう。

そんな先が見えない今でも、飲食業界が好きで、今後も飲食業界に関わることを考えている人に、
ひとつ選択肢としておすすめなのが、飲食業の会社に正社員として転職することです。

もちろん一時的だとしても、アルバイト・パートだと単に時間労働を提供するだけになるので、おすすめしません。

正社員だからこそ得られるノウハウや、今後に繋がる知見、実績などを貯めていくことができます。

 

今回はこんな今だからこそ、あえて。

これまで飲食業界で働いていた人はもちろん、これから始めたい人、過去に自分でお店をやっていて、再起を狙う人も。

飲食業界で成功するためのひとつの選択肢、「飲食業で正社員として働く」ということについて紹介していきます。

流れとしてはこうです。

  1. 正社員を募集している会社(つまり飲食業界の中で上手くいっている会社)へ転職
  2. 安定してお金を稼ぎながら、ノウハウや仲間を作る
  3. 自分の中で軌道に乗ればそのまま続けるも良し、さらにステップアップしたければ再度転職でもOK。
    良くも悪くも人の流動性の高い業界なので、仲間が多ければそれだけ紹介や雇用の機会も多くなります。

これから自分でお店を立ち上げる人も、一度、飲食業界で成功している会社へ転職することで、
また新たなノウハウ・人脈・資金を貯めることができます。

この記事では、飲食業で正社員で腰を据えて働くことのメリットを順に見ていきます。

スキルが身につく


ご存じのとおり飲食業は、特に資格や経験が無くてもゼロから参入して成り上がりやすい業界です。

もし調理学校などで基礎技術を学んで来たとしても、仕事をしていく中で一番大事なのは現場での仕事力。

すでに飲食業での勤務経験があれば、それだけでもかなりのアドバンテージがあるでしょう。

また、一般的な飲食店はもちろん、個人で名前の立っている有名シェフのお店でも、業態やお店によって重要とされるポイントは変わってくるので、ほとんど入ってから学ぶことの方が多いと思います。

一例として、斬新な経営手法で話題になり書籍も出版された「未来食堂」の小林せかいさんは、元はエンジニア。

退職後に飲食店で働いて、調理接客・オペレーション・経営などを学び、それをベースに未来食堂を立ち上げ、成功されています。

このように、やりかた次第では後発や未経験でも関係なく勝てるのが飲食業の良いところ。

飲食店で正社員としてお金を稼ぎながらノウハウや仲間を得て、それをベースに自分のお店を持つ、という流れも一般的ですね。

さらに余談ですが、もし名のあるお店で働いたのであれば、それをブランドや強みにできたりもします。
自分でお店を出す人は、例えば「銀座の名店○○で修行して独立〜」みたいな見せ方もできますね。

ちなみに僕の奥さんは元々日本有数の有名ホテルのラウンジで働いていたのですが、
その後別のホテルに転職するときに、社長さんが自ら出てきてくれたことがあるそうです笑。

当然即採用でしたが、社長さん、そこでの経験に興味津々だったそうです笑

 

少し話が脱線しましたが、飲食店では他業種よりも比較的早い段階で広範囲の業務を経験することができます

もちろん小規模店舗と大手チェーンとで得られるものは多少変わってきますが、
飲食店で正社員として働くことで、概ね以下のようなスキル・ノウハウが学べます。
(正社員と何度も言うのは、アルバイト・パートでは経験できない範囲の仕事が経験できるからです。)

■個人店〜中規模までの飲食店
規模が小さいほど広範囲に経験できる傾向にあります。
お客さんのリアクションや客足など、直接的な反響が見えるのは、他業種ではなかなかできない経験。

正社員であれば、比較的早い段階でスタッフの育成や経営改善など、経営者に近いところを経験できるのもメリットです。

  • 調理技術
  • 接客・コミュニケーション技術
  • 経営感覚
  • マネジメント
  • 人材育成

■大手チェーンの飲食店
細かくシステム化され、オペレーションもある程度決まっている大手チェーンなどは、専門技術というよりも、商売としての仕組みが勉強になるかと思います。

  • オペレーションや効率的な店舗運営の仕組み
  • 商品開発、ブランドの作り方
  • マネジメント
  • 人材育成

店舗経営について学べる


大きなチェーン店などではまた違ってきますが、ある程度の実績を積めば、原価率やFLなど、店舗経営に関する情報にも触れることができます。

F(フード→食材原価)、L(レイバー→人件費)の数字を元に、FLコストやFL比率を算出して売上を立てていく作業は、経営の根本に関わるところで、他業種だと一般社員クラスではなかなか触れることができないところかと思います。

もちろん他業種でもこれらの数字は社内情報として閲覧はできるかもしれませんが、
実業務と関連づけて、より身近なレベルで感じることができるのは、飲食業ならではだと思います。

また、経験者でも、このあたりはお店によってはざっくりしているところもあるので、
しっかりとした飲食業界の”会社”で働くことで、このあたりの数字は意識させられるので、結構意識変わるかと思います。

そして、これは同じ飲食業でも、アルバイトなどで単に時間労働を提供しているだけだとなかなか気にしない数字であり、
頭の中でこういうことを考えるクセができれば、飲食に限らず、社会で仕事をする上で重宝しますし、仕事の質も上がっていきます。

マネジメントの経験ができる

飲食店で正社員として働いていると、そのうちアルバイトさんのマネジメントも必要になってきます。

教育やシフト管理などはもちろんですが、スタッフによってはや本人のモチベーションややりがいなども考慮して
お店がスムーズに回るようマネジメントする必要があります。

これも一般企業の社員としてこのポジションに行くには、それなりに時間も労力も必要です。

飲食店であれば、比較的早い段階でスタッフの育成や業務管理など、マネジメントの領域を経験できるのもメリットです。

人脈ができる


飲食業界は人の流動性が高い業界なので、アルバイトさん含め、人と出会う機会が多いです。
もちろん合う人合わない人いると思いますが、同じ業界で仲間が増えるのは大きなメリット。

もし今のお店を退職して転職を考える場合も、同じ業界にいる仲間からお店に誘われたりして職探しにも困らないですし、
新規店舗の立ち上げをする人から声がかかったりもします。

また、将来自分(自分たち)でお店を出したいと思っている人にも大きなメリットになるはず。

僕もそうでしたが、飲食店を立ち上げる、となったときに真っ先に考えるのが、人です。

もちろん求人広告も出しますし、方々に声もかけるのすが、お客さんと直で向き合う仕事なので、やはり人を選びます。
イチから出会って働きながら関係値を作っていくのもアリですが、
元同僚であれば仕事への向き合い方やパーソナリティもある程度知っているので、ミスマッチが防げるというメリットがあります。

一例として、都内に10店舗以上を構える知人のオーナーさんは
元々飲食店で社員として働いていて、創業メンバーはほとんどがその時のメンバーだそうです。

経営・調理・接客ともに質が高く、数年で一気に拡大しましたが、
周りに飲食関係者が多いというのはやはり大きな強みで、仕事のできるスタッフも集まりやすかったようです。

またお店を出したい人から声がかかった事例として、

僕の店の元店長は、個人的事情で退職することになった後、
お店を出したい常連さんや、飲食系の業者さんから、いくつか声がかかっていました。
本人は固辞していましたが、その業界で腰を据えて働いていると、こういうミラクルが起きることもあります。

そういう意味でも「飲食業の正社員」という肩書きは、
ある種「本気で飲食やってるよ」というバロメーターになるのかもしれません。

人としての実績・成長ができる


飲食店で正社員として働くことについて、以下のようなメリットを挙げてきました。

  • アルバイト・パートでは経験できない範囲の仕事が経験できる
  • 他業種よりも早い段階でマネジメントや経営に近い部分の経験ができる

これは人としての価値を高めることにもなるようです。

 

一例として、
僕が居酒屋を経営しているときに、人材紹介会社の担当者さんから聞いたのですが、
比較的小規模なお店で正社員で店長やスタッフとして働いていた人は、求人界隈でもとても人気が高いのだそうです。

飲食業界は人の流動性が高く、なかなか優秀な人材が残らなかったりする業界ですが、
特に、自分達でお店を試行錯誤しながら運営してきた経験は、ある意味“主体的に働く”ということ。
これは誰もが欲しいスキルなのだそうです。

経験者の方はご存じだと思いますが、
小規模店舗だと、日々改善と試行錯誤、トライアンドエラーの嵐で、
考えるクセが自然と付いていったりします。

ちなみに私ごとですが、うちの奥さんがまったく別業種で働こうとしたときに、
その業界自体はまったくの未経験でしたが、長い接客経験やコミュニケーション力が買われて、すぐに内定をもらっていました。

もちろん会社との相性もありますが、腰を据えてやってきた分かりやすい実績というのは、ある種業種を問わず役に立つものだと実感しました。

福利厚生


一般的に正社員のメリットと言われて多くの人が思い浮かべるのはこれかもしれません。
とかく激務で休みが無いイメージの飲食業ですが、

・社会保険
・厚生年金
・失業保険
・有給休暇

など、被雇用者を守るための福利厚生はもちろんあります。
未だにブラックな会社もあるにはあるようですが、いまはSNS等も発達してきているので、
事前にある程度の予防線は張れるかと思います。

以上、飲食業界で正社員として働くメリットを挙げてきましたが、
捉え方次第ですが、もちろんデメリットもあります。

これも念のため紹介しておきます。

デメリット

1. 労働時間が長い・不規則

飲食業が不人気な理由で大きなものがこれ。
ランチ営業をしている店舗だと一日の労働時間が長めだったり、
基本的に土日は動いている業界なので、休日が変則的だったりと、わりと不規則なところはあります。

2. 土日休みが取りにくい(お店による)

お客さんを迎える商売なので、これはある種避けられない特徴。

これがどうしてもダメという人は、そもそも飲食業を選ばないかもしれませんが、
それでもビジネス需要をターゲットに、オフィス街などで展開しているお店であれば
土日が閑散期となったりして、逆に休みが取りやすいところもあったりします。

あとはわりと大きめの会社で正社員スタッフ多めの店舗であれば、交代で取得できるので、
それだけ休暇の融通も利きやすかったりします。

あと飲食店営業とは若干ズレますが、卸などをやっている会社であれば、基本土日は休みですね。

3. 色んな人がいる笑

メリットでも書きましたが、新規参入がしやすい業界なので、良くも悪くも色んな人がいます。
もちろん調理学校でバリバリ修行してきた人もいれば、誤解を恐れずに書くと、業態によっては民度の低い人やガラの悪い人がいることもあります。

ただこれは飲食業以外でも少なからずあることなので、むしろそういった人たちと上手くつきあえる(またはスルーする)スキルを付けてしまう方が絶対的に得です。
あまりにおかしな人はみんな分かりますし、自然と淘汰されて辞めていきますし、
人を上手く動かせるスキルは、不況だろうが他業種だろうが必要とされるので、マネジメントスキルをアップさせるためと前向きに捉えられると一番良いかと思います。

4. 業種としての安定感(飲食だけじゃないけども)

感染症によるダメージや農作物の不作による仕入れ値の高騰など、外的要因を大きく受ける業界です。
ただ、これらが起きることは防げませんが、起きた時にどうするか、というのがポイント。
常日頃から問題に対する対処の仕方を意識しておくことで、いざという時に生き残る側になれます。

以上デメリットも書いてみましたが、

ブラックで休みが無いと言われる会社は、そもそも経営の仕組み自体がうまく回っていない場合があります。
先にも書きましたが、今はSNSなどである程度事前に調べることができるので、うまく活用するのが良いかと思います。

向きあえば向き合うだけ得るものも多い業界


僕自身も渋谷で7年間、飲食店を経営していました。

自分自身もそうでしたし、周りの飲食関係者や業者さんなどの話を聞いていても、
飲食業は本腰で向き合うと、実はかなりビジネス上、濃密で広範囲な体験ができるのがメリットです。

ゼロから参入しても、現場仕事からマネジメントまで体験でき、問題解決力も鍛えることができる
また、会社によっては商売の仕方やブランドの作り方など、一般企業でも役立つノウハウに触れることができたりもします。

「来店した顧客に、食事を作り利益を乗せて、提供する」というシンプルな業種であるだけに、
企画、製造、営業など、商売の基本をひととおり学ぶことができる
これが、飲食業界で正社員として働く大きなメリットと言えるかもしれません。

飲食店、外食産業が好きで関わって行きたい、という人は一度、正社員としてお金を稼ぎながら、
思い切りノウハウやスキルを吸収し、キャリアを積み上げてみてはいかがでしょうか。