【2026年9月版】小さな飲食店のインボイス・電子帳簿保存法、結局どこを見ればいいのか

そろばん

こんにちは、タキです。
2012年に渋谷で12坪ほどの飲食店を立ち上げ、のちに居抜きで売却しました。

先に正直に書いておきます。インボイス制度が始まったのは2023年10月なので、僕が自分の店でインボイスの処理をした経験はありません。「うちではこう処理していた」とは書けない話です。

そのかわり、国税庁が出している資料を今回あらためて読み込んで、10坪から20坪くらいの小さな店なら結局どこだけ見ておけばいいのか、という部分だけを整理しました。制度の全体解説ではなく、店主が手を動かすところに絞ります。

2026年10月から経過措置の割合が変わるので、このタイミングで一度確認しておくと、来年の申告で慌てずに済みます。

スポンサーリンク

この記事の前提(2026年9月時点)

日付や割合は、国税庁の資料で確認できたものだけを書いています。記事の最後に参照元をまとめました。

ただし、自分の店がどの特例を使えるかは、個人か法人か、課税売上高がいくらか、いつ登録したかで変わります。最後の判断は所轄の税務署か顧問税理士に確認してください。ここに書いたのは「何を持って相談に行けばいいか」までです。

まず確認する3つ

この3つの組み合わせで、以降の話のうちどれが自分に関係あるかが決まります。確定申告書の控えと、税務署から届いた登録通知を引っ張り出せば5分で終わります。

・いま課税事業者か、免税事業者か
・課税事業者なら、一般課税か簡易課税か
・適格請求書発行事業者(インボイス)の登録をしているか

ここが曖昧なまま制度の解説を読んでも、自分に関係ない話まで全部読むことになって時間を損します。

2026年10月から、免税事業者からの仕入れは「7割控除」に

令和8年度税制改正で、免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置の割合が見直されました。国税庁のリーフレットに改正前と改正後が並べて書かれています。

改正前
令和8年10月〜令和11年9月 50%
令和11年10月以降 0%

改正後
令和8年10月〜令和10年9月 70%
令和10年10月〜令和12年9月 50%
令和12年10月〜令和13年9月 30%
令和13年10月以降 0%

適用期限が2年延長され、7割・5割・3割と段階が増えた形です。いきなり5割ではなくなった、と考えればわかりやすい。

自分の店でいくら違うのか、試算の手順

1. 直近3か月の支払いのうち、登録番号のない相手への仕入れ・外注費(税込)を合計する
2. それに10/110を掛けて、消費税相当額を出す
3. その30%が、2026年10月以降に控除できなくなる分

たとえば、登録していない相手からの仕入れが月20万円(税込)の店なら、

200,000円 × 10/110 = 18,181円
18,181円 × 30% = 約5,454円/月
年間で約65,000円

改正前の予定(5割控除)なら月約9,090円だったので、年間で5万円弱ぶん負担が軽くなる計算になります。

小さな店ほど、個人でやっている農家や酒屋、個人タクシー、フリーのデザイナーやカメラマンなど、登録していない相手との取引が残っているものです。一度この金額を出してみると、無視していい額なのか、税理士に相談すべき額なのかがはっきりします。感覚で不安がっているより、3か月ぶんの帳簿をめくったほうが早い。

よくある勘違い:「1億円」は小さな店には関係ない

同じ改正で、控除限度額の見直しも入りました。適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れの合計額が、1年(1事業年度)で1億円を超える部分については、経過措置を適用しない、という内容です。改正前は10億円でした。令和8年10月1日以後に開始する課税期間から適用されます。

ニュースだと「1億円」という数字だけが目立ちますが、これは登録していない相手からの仕入れが年間1億円を超えたらという話です。個人店で該当することはまずありません。ここで不安になる必要はない部分です。

2割特例は終わり、個人事業者には「3割特例」

免税事業者からインボイス登録をした人が使ってきた2割特例は、令和8年9月30日までの日の属する課税期間で終了します。個人事業者は暦年が課税期間なので、令和8年分(2026年分)の確定申告が2割特例の最後ということになります。

かわりに3割特例が創設されます。個人事業者である適格請求書発行事業者について、令和9年分と令和10年分の納付税額を、課税標準額に対する消費税額の3割とすることができる、という内容です。

法人は使えません(個人事業者限定)
・事前の届出は不要で、確定申告書にその旨を付記する
・免税事業者がインボイス登録をした、または課税事業者選択届出書を出したことによって、事業者免税点制度の適用を受けられなくなる課税期間に限られる

あわせて、簡易課税制度選択届出書の提出期限の特例も見直されています。2割特例や3割特例を使った課税期間の翌課税期間に係る確定申告期限までに提出すれば、その翌課税期間から簡易課税が使えます。特例が終わったあとにどう転ぶか、という話なので、ここは申告のときに税理士へ確認しておくところです。

簡易課税の事業区分は自分で決めつけない

飲食店業は第4種事業(みなし仕入率60%)が基本です。第5種のサービス業からは「飲食店業に該当する事業を除く」と明記されています。ただし、テイクアウトや物販の比率が高い店だと話が変わってくるので、ここも自己判断はしないほうがいい。簡易課税が使えるのは基準期間の課税売上高が5,000万円以下の場合です。

インボイスを「出す側」のチェックリスト

飲食店は簡易インボイス(適格簡易請求書)でかまいません。国税庁のタックスアンサーにも、小売業・飲食店業・タクシー業等が交付する書類については、適用税率か税率ごとに区分した消費税額等のどちらかの記載で差し支えなく、書類の交付を受ける事業者の氏名または名称の記載も不要と書かれています。

・レシートに登録番号(T+13桁、法人はT+法人番号)が印字されているか
・レジを入れ替えたときに、その設定が引き継がれているか
・税率ごとの区分ができているか(店内飲食10%、テイクアウト8%)
・手書きの領収書を出すときのために、登録番号入りのゴム印を用意しているか
・交付したレシートの控え(ジャーナル)を保存しているか

レジの設定は、実際に自分でテイクアウトの会計を打ってみて、出てきた紙を見るのが確実です。法人の取引先から「登録番号が入っていない」と連絡が来てから直すより、先に一度打ってみるほうが早い。

インボイスを「もらう側」:1万円未満の少額特例

基準期間の課税売上高が1億円以下、または特定期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者は、令和5年10月1日から令和11年9月30日までに行った課税仕入れのうち、税込1万円未満のものについては、一定の事項を記載した帳簿の保存だけで仕入税額控除が認められます。

・相手が免税事業者でも使える
・判定は1回の取引単位。5,000円の品と7,000円の品を同時に買って合計12,000円になれば、対象外になる
・帳簿に「この特例を使った」と書く必要はない

急な買い出しでスーパーやホームセンターに走る、という場面が多い店ほど効いてくる特例です。適用期限が令和11年9月30日までである点は頭に入れておいてください。

電子帳簿保存法:紙をデータ化する義務はない

ここが一番の勘違いポイントです。義務なのは電子でやりとりしたものを電子のまま保存することであって、紙で受け取った請求書や領収書をスキャンしてデータ化する義務はありません。

飲食店で実際に該当するもの

・メールにPDFで届く食材業者や酒販店の請求書
・デリバリー代行やグルメサイトの管理画面からダウンロードする支払明細
・ネット通販で備品や食材を買ったときの領収書
・電子契約した賃貸借契約書やリース契約書
・クレジットカードやキャッシュレス決済の利用明細をデータで受け取っている場合

デリバリーやグルメサイトを使っている店は、ほぼ確実に該当します。Uber Eatsのようなデリバリー代行や、グルメサイトの掲載料は管理画面から明細をダウンロードする形になるので、そのPDFが電子取引データです。ダウンロードせずに放置している店は、まずそこから。

守るルールは3つ

①改ざん防止の措置をとる
②ディスプレイやプリンタなどを備え付ける
③日付・金額・取引先で検索できるようにする

①は、タイムスタンプの付いたデータを受け取る、訂正削除の履歴が残るシステムを使う、といった方法のほかに、改ざん防止のための事務処理規程を作って備え付けるという方法があります。国税庁がWordのサンプルを配布していて、個人事業者の例と法人の例の両方があります。小さな店なら、これを印刷して名前を入れて置いておくのが一番お金がかかりません。

③は、専用ソフトを入れなくても、ファイル名を「20260930_110000_〇〇商店.pdf」のように規則性をもたせて一つのフォルダにまとめる、表計算ソフトで索引簿を作る、といった方法が認められています。

売上5,000万円以下なら検索要件は不要

基準期間(2年(期)前)の売上高が5,000万円以下の事業者等は、税務調査の際にデータのダウンロードの求めに応じられるのであれば、③の検索要件を満たす必要がありません。個人店の多くはここに入ります。

それも間に合わないときの猶予措置

次の2つを満たせば、電子取引データをそのまま保存しておくだけでよいことになっています。

①原則どおりに保存できなかったことについて、所轄税務署長が相当の理由があると認めること。人手不足、システム整備の資金不足、システム整備が間に合わないといった事情も、相当の理由として認められるとされています
②税務調査の際に、データのダウンロードの求めと、紙に出力した書面の提示・提出の求めの両方に応じられること

事前の届出は不要です。ただし「何もしなくていい」ではなく、データを消さずに残しておくことと、紙に出せるようにしておくことが条件になります。

2027年4月の「飲食料品1%」はまだ決まっていない

2026年9月15日に「飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入に関する大綱」が閣議決定され、国税庁が特設サイトとQ&Aを公開しました。令和9年4月1日から令和11年3月31日までの2年間、飲食料品に係る消費税率を1%にする、という内容です。

ただし、国税庁自身が「今後、法案が国会に提出され、審議を経た上で可決・成立した場合のもの」と明記しています。現時点では決定事項ではありません。そのうえで、飲食店に関係しそうな点だけ挙げておきます。

・対象範囲は今の8%と同じなので、店内飲食(外食)は対象外で10%のまま。テイクアウトや出前・宅配が1%の対象になる
・酒類は対象外
・仕入れが1%で売上が10%になる事業者は、引下げが終わったあとに仕入税額が増える、とQ&Aにも書かれている
・簡易課税については、業種区分にかかわらず飲食料品の譲渡に係る売上税額と同額の仕入税額を計上する、という計算方法の特例が設けられる予定
・インボイスの記載事項そのものは変わらない

レジやPOSの改修が絡む話なので、法案の行方とメーカーの対応予定は追いかけておいたほうがいい部分です。値付けと総額表示の話は値上げ・価格設定の記事のほうに書きました。

まとめ:小さな店の優先順位

1. 課税か免税か、一般課税か簡易課税か、登録の有無を確認する(今日できる)
2. 登録番号のない相手への支払いを、3か月分だけ集計する(30分)
3. レジでテイクアウトの会計を1回打って、登録番号と税率区分を確認する(10分)
4. 電子取引データの保存先フォルダを1か所に決めて、事務処理規程のサンプルを印刷して置く(1時間)
5. 個人事業者は、3割特例が使えるかを確定申告の前に税務署か税理士に確認する

制度の全体像を覚える必要はなくて、自分の店に関係する枝だけ押さえておけば足ります。1から4までは、合計しても半日かからない作業です。

参考にした資料

いずれも国税庁のページです。制度は変わるので、実際に手続きをする前に最新版を見てください。

令和8年度税制改正特集
No.6496 仕入税額控除をするための帳簿及び請求書等の保存
No.6625 適格請求書等の記載事項
No.6509 簡易課税制度の事業区分
電子帳簿等保存制度特設サイト
参考資料(各種規程等のサンプル)
消費税率引下げ特設サイト

この記事は2026年9月16日時点で公開されている情報をもとに書いています。税務の個別判断については、所轄の税務署または税理士にご相談ください。